sarapedals / SLC レビュー

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※本記事はプロモーションを含みます

 

 

前回のBMTに引き続き、日本のペダルブランドsarapedals (https://x.com/sarapedals)よりペダルレビューのご依頼をいただきました。

トライアングルマフをフィーチャーしたファズ、BMTの記事はこちら

nota-p.hatenablog.com

 

 

■はじめに

当ブログを普段読んでいただいている方にはお分かりかとおもいますが、特段音が良い!とか、忖度なく言ってここが悪い!とかではなく、特定のペダルと比べて音がこう違うとか、こういうジャンルや弾き方、または運用方法から考えて適しているorこういう使い方が好みor向いている…等

あくまでそのペダルの個性を考えるタイプの記事をモットーとしているので報酬をいただいている分、ペダルの特徴と使用時の感触について詳細に書くことを重視しています。すこしでも購入を検討されている方の検討材料になればうれしいです。

 

■sarapedals SLC

sarapedalsは2017年からビルダーの江川氏が立ち上げたエフェクターブランド。

江川氏はその後、2020年にリビルドされたPhantomfxのMotherを戸高氏とともに製作。トライアングル期のBIGMUFFを基に設計されたBMTのリリースを経て、リリース第二弾は歪みではなくコンプレッサー。こちらはヴィンテージのMXR DynaComp(スクリプト期)のものを参考にトーンコントロールを追加したものとのことで、VCA式のコンプです。

 

■サイズ・仕様

サイズは前回のレビューでも書いた通り、同ブランドのBMTと同じサイズ。

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BOSSと並べるとこんな感じ

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RATより一回り大きいくらいです。

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トップジャックで、IN OUT 9Vジャックが一つの面にまとまっています。

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トップのsarapedalsのロゴはオーダー時白か黒か選べるようです

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よって前回のBMTとの違いは側面のモデル表記のみ

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内部はBMTと同じく精密に組まれており、ポットも大きく信頼性が高そうです。写真では蛇の目基板が使用されていますが、デモ機のため販売品はBMTと同じ素材の基板になるようです。

中のトリムポットはメーカー調整用のようで、ボンドが付けてあるのでいじらない方がよさそう。

スイッチはトゥルーバイパス、電池は使用不可

 

■音の印象

最初弾いた印象は、「ちゃんとコンプがかかってるのにクリア」でした。

ちゃんとコンプがかかっているというと語弊があるかもしれないですが、サステイン最小でも弦をはじいた瞬間の切っ先をまとめて、特にコードを弾いた時に各弦の発音がアタック部分だけぎゅっとまとまるので音が速く出るような感覚になります。(おそらくプレゼンス部分が歪んでサチュレーションさせているような音になってる?)

僕が基となったスクリプト期のDynaCompの音を知らなかったり、コンプのモディファイだったり追加機能のセオリーが高域のこもりをなくすためのトーンを採用するのが鉄板だった印象もあり、(後述するScriptのDynaCompの感想含め)こんなに高域がこもらずクリアに出るのか…と新鮮。

単体使用でのキャラはそのクリアさからトレブルが目立つ俗にいう「トゥワンギー」な印象で、単体で使用するとテレキャスターをチキンピッキングで弾きたくなる、弦の質感を感じる小気味良い弾き心地のコンプです。

 

■コントロール:ボリューム

体感的な音量感はトーンとサステインの位置により変化しますがDnyaCompやBOSS CS-2 CS-3等のクラシカルなコンプと比べると音量は大きめですが、大きすぎるわけではなく常識的な音量。上げる方にも下げる方にも操作しやすくストレスない塩梅。

 

■コントロール:トーン

全体のトーンを調整します。ローパス(ハイカット)フィルターとのことだったので一度トーン最大でためしてみましたが、最大だとスコーンと抜ける高域が出て結構トレブリーな印象。そこからトーンを下げていくと音がこもる感じではなく、もちろん高域が大人しくはなるんですが、全体的に音が遠く柔らかくなっていくような独特な利き方をします。

トーンを下げると体感的な音量感が下がるのも、この音の遠さを感じる理由かも。

 

■コントロール:サステイン

基本的にサステイン最小でもコンプがかかったとわかるくらいコンプレッションはあります。が、前述の高域のクリアさからコンプレッションが効いて詰まっているという感じではなく、アタックの強すぎる部分を圧縮して勢いに変換してくれる感覚で、サステインを上げていってもその印象は変わりません。全体的にコンプの効きは薄めに作られているようで、最大でも強くかかりすぎることはなくノイズも最大付近以外では特に目立たないです。

 

■通常のコンプとして

高域がクリアなためパツパツ感は感じづらいところがあり、単音のカッティングをパーカッシブに響かせるようなDynaCompの定番な使い方はあまりハマらず。

トーンを12時より下げ目にすると強く弾いた時のパコパコ感が出てきてそれっぽくなりますが、そう使うよりはやはりトーン上げ目でコードを弾いた時のジャキンとした音で使う方がSLCの魅力を引き出せるような印象でした。

 

■スライドギター用として

トーンを下げ切ってサステインを上げ目のセッティングにすると弦のぎらつきや雑味が抑えられ、スライドバーを使った演奏にマッチするまろやかな音になります。特にスチール製のスライドバー+シングルコイルの組み合わせの場合ギラギラしすぎるためアンプや他セッティングを大幅に変える必要出てくるとおもうんですが、セッティングそのまま曲の一部だけスライドを使いたい場合などにSLCを使用すると良い感じにバランスが取れます。

 

■初段プリアンプとして

今まで書いてきた通り、アタックの強い部分がトリートメントされるというか、特にサステイン最小で使用する場合はコンプというよりは歪み未満のすこしサチュレーションさせているのと近い感覚の音がします。

アタックの切っ先が歪み感のようなジャキジャキした音に変換されるため、クランチ程度の歪みと組み合わせるとコードやブラッシングをガシガシやりたくなるような鉄弦オルタナサウンドな感じが簡単に作れます。

また余韻もコンプで持ち上がるため、シングルコイルのギターを使用していて、バンドで音出しした時に歪ませないと音が目立たないとか、アタックだけ聴こえてギターの余韻部分が消える…みたいに悩んでいる方はサステイン最小で初段プリアンプとしての使用がおすすめです。

特にトーンの効きはシングルコイルの音のジャキっとした雰囲気を崩さずに柔らかく(中高域の出方を均一に)してくれるので、JCM2000等の高域が出すぎで調整が難しいアンプをなじませるのにかなり重宝すると思います。

 

■アンプ及び他ペダルの前段ブースターとして

ボリュームは余裕があり、ブースターとしても使用可能。

また、ここでもトーンが有用で上げ目に設定するとトレブル~プレゼンスブースターのようにカキンとした中高域が強調され、トーンを下げると弦のタッチノイズや高域の雑味が抑えられクリーミーまではいかない太く上品なブーストサウンドに。

サステインやトーンを上げるとノイズは増えるのでそこのバランスをみながらどちらかのノブを上げ目にする使い方がよさそうです。

オーバードライブでブーストするよりクリアでフルレンジ、クリーンブースター等でブーストするよりも音の調整ができてサステインがあるので、そこが利点ですね。

 

■音量を下げる役割として

アンプや後段の歪みで歪ませている状態で、サステインとレベルを下げて使用すると後段のインプットゲインを下げる働きによって歪みを減らすことができます。

しかも基本の音が高域の切っ先が鋭いコンプなので、後段ががっつり歪んで太いディストーションサウンドでもコードカッティングが映えるクランチサウンドまで歪みを落とすことができ、かなり調整が利きます。

歪みが落ちているのにコンプの効きによってサステインが確保され弾きやすいのでこの使い方はおすすめ。

逆にサステイン最小でもコンプ感はあるので最後段に置いてトータルコンプとしての使用はあまり向いていません。

あくまでエフェクティブなコンプとしてのクリアさです。

 

 

■ベースでの使用

僕が宅録でしかベースを弾かないので、実際ライブなどでの使用の使い心地は不明ですが、音をまとめるのにプラスしてトーンを上げ目にすると少しゴリっとした浅い歪みが乗っかって結構ロックなベースサウンドになります。サステイン下げ目でこの場合もコンプではなく味付けやプリアンプとして使うのがよさそう。

 

■各コンプとの比較

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レビューご依頼いただいた際、スクリプトのDynaCompを弾いたことない旨お伝えしたところ、なんとお貸しいただけました(しかもROSSも…!)ので、所持しているものも含め、ヴィンテージのコンプとの比較をしてみようと思います。

 

・VS DynaComp(Script)

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※トゥルーバイパス、LED、アダプタジャックモディファイ済

この個体を基に作られているだけあり、基本の音やコンプ感が似ています。Scriptもある程度高域がクリアでSENSITIVITY最小でもコンプ感があるけど自然な音色。

中高域に独特のクッした癖がある(カールコードをつないだような一種の劣化感)が漂うのもヴィンテージ機材らしい音です。

SLCのトーン13時くらいでScriptの音に近づくので、ヴィンテージコンプの音を再現する場合この辺りからトーンの位置を決めるとよさそうです。

パーツが新しいためかSLCの方は前述の中高域のクセは無く、透明感がある音色。

音量はDynaCompのOUTPUT最大が体感SLCのLEVEL 14時~15時前あたりもうちょっと音量が欲しいなくらいに届いてくれる音量UP具合です。

 

・VS ROSS COMPRESSOR

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ROSSの方がコンプ感が若干薄く、SUSTAINノブ最小、LEVELノブ最大だとONにしているのかちょっと迷うくらいの自然さで太くまろやか。

DynaCompくらいの掛かり方のコンプしかなかった時代、確かにナチュラル系のコンプとして一世を風靡するのも頷けます。アタックの先を歪みっぽくするサチュレーション的な音の変化は感じず、そこが大人しく聞こえる所以だと思います。

そのせいもありこもっている感じは無いですがサステインを上げると単音カッティングに合うパコパコしたサウンドにもなります。

SLCと似ている部分は少ないですが、トーンを14時以下に抑えると似たニュアンスは出せそう。

 

・VS BOSS CS-2

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これも一昔前に人気だったヴィンテージVCAコンプですが、SLCと比べるとはっきりとコンプ!といった印象。

バッファがついているのとATTACKノブがあるので、ある程度音をクリアにすることもできますが、基本的な帯域が狭め(上下が削られて若干ローファイな音像)で、コード弾きをすると弦一本一本にパツパツとしたコンプ感がある感じなのでプリアンプとして使用するのであれば圧倒的にSLCです。

CS-2はATTACKノブ上げめで使用するとSLCに若干近づけますが、プリアンプ的な用途でコンプを使いたい場合でCS-2を使用していて不満がある人はSLCをおすすめします。

 

以上、とにかく高域のクリアさと歪みと組み合わせたときのジャキジャキ感、トーンの効きが特徴で、後段のアンプや歪みの具合をSLCのレベルを上げ下げすることでコントロールできるのを念頭に置いて操作するとまさにプリアンプとしての効果を発揮します。

 

オーダーについてはsarapedals公式の記事下部のオーダーフォームリンクから

メールもしくは注文フォームにて受注されているようです。ぜひ

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