Umbrella Company / Mayonaise Fuzz レビュー

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※本記事はプロモーションを含みます

Old Blood Noise Endevors, chase bliss, 1981 Inventions, Beetronics等…気鋭の海外メーカーの輸入代理店として、また自社開発でオーディオ機器・ペダルブランドとしても注目を集めているUmbrella Company(https://umbrella-company.jp/)よりペダルレビューのご依頼をいただきました。

 

■はじめに
僕のブログを普段読んでいただいている方にはお分かりかとおもいますが、特段音が良い!とか、忖度なく言ってここが悪い!とかではなく、特定のペダルと比べて音がこう違うとか、こういうジャンルや弾き方、または運用方法から考えて適している、こういう使い方が好みor向いている…等

あくまでそのペダルの個性を考えるタイプの記事をモットーとしているので報酬をいただいている分、褒めるわけでもわざと悪い部分を書くわけでもなくペダルの特徴と使用時の感触についてとにかく詳しく書くことを重視します。すこしでも購入を検討されている方の検討材料になればうれしいです。

 

■Umbrella Company  Mayonaise Fuzz


ツイード系ODの「Hitchhike Drive」、ハードOD/DSの「#24」を経て、2023年10月にUmbrella Company初のファズとして発売されたモデルです。

今回、ご依頼時でのメールのやりとりでいろいろと補足のご説明をいただきました掲載の許可いただいているので該当文掲載します。

これだけでも購入検討・もしくは本体の音作りにおいて十二分に価値がある内容です

開発はFender Deluxe ReverbやTwin Reverbで主に行いましたが、JCとも相性はいいかと思います。Marshall系だとジャキジャキしてしまう印象です。

回路にこだわらずサウンドメインで開発したため、Mayonaiseという名前ですが中身はオペアンプではありません。

個人的なベスト設定はSUSTAIN最大、DOPINGオンでTONEを左回しきりです。DOPINGオンだとTONEのカーブが変化します、最小/最大のポジションもお試しください。

裏蓋開けて中のジャンパを差し替えると更に低音がモリモリ出るので、ぜひこちらもお試しください。

開発中はジャズマスターテレキャスターストラトキャスターなどシングルコイル系で主にチェックしておりました。

1979スイッチは開発中ハムバッカーで弾いたところ全体的に少しブーミー過ぎる感触があり、ハイを際立たせるという目的で搭載しました。
結果シングルコイルでも状況に応じて使えるいい塩梅かと思います。1979オンにした際はローゲインの設定もお試しください。

各ネーミングから分かる人にはすぐわかってしまう感じかと思いますが笑、オペアンプ構成ではないこと筆頭に、スマパンどんずばのサウンドを狙ったものではありません。ですが結果近い雰囲気は出せたのでは無いかと思います。

上記の通り、回路的にオペアンプマフのクローンモデルではありません。トランジスタ4石のため、通常のビッグマフを基に独自のチューンナップをされているよう。そのため、ただオペアンプマフとしての比較ではなく、より幅広く他のマフ系と比べてみようと思います。

 

■外見・内部・仕様

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サイズは最近よく見かけるMXRサイズより一回り大きめのもの。EQDのペダルと同サイズといったほうがわかりやすいかも

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IN OUTはサイドジャック。僕はペダルとペダルをくっつけて配置したりせず、基本的にL字のパッチを使うのでこのサイズ感ではトップジャックでないほうが好みです。

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DCジャックが上部についているのも良いですね。サイドジャックだと回路の引き回しの都合からインかアウトのすぐ近くにDCジャックが配置されている場合がおおいですが、個人的には上部についていた方が手軽に使えます。

電池は使用できず、アダプタもしくはパワーサプライでの供給のみ。電力の消費自体は通常のマフと同じようにかなり少ないので特にサプライの容量関係なく使えます。

 

■コントロール

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VOLUME, TONE, SUSTAINと通常のマフと同じコントロールに加え、DOPINGと1978という2種類のスイッチを搭載。 公式サイトの説明文によると…

・DOPING
Toneコントロールで失われていた中音域を猛烈にプッシュし、音像にアドレナリンを注入

・1979
ゲインストラクチャーを変化させ、高音域のエンハンスやローゲインサウンドに多角的に影響

とあります。
まず注意点として、どちらのスイッチもオペアンプや3rdマフ、最近だとToneWickerやNano Op-Amp Muffに搭載されているようなトーンバイパススイッチではありません。どちらのスイッチをONにしても音量自体に大きな変化はなく、トーンノブはしっかり効きます。この特徴はかなり重要になってくるので後述

■音量
デカいです。操作していて音量が小さい・操作しにくいなどのストレスはありませんでした。

こちらも各マフとの比較で後述しますが、基本的に「抜けるマフ」の音量感で、包み込むタイプの巨大な音像というよりは前に出て張り付くようなキャラクターをしています。おそらく他のマフよりもミッドスクープ量が少なくナチュラルな中域が出ている点や、DOPING、1979スイッチの効果がその印象を与えていそうです。

サウンド
・各スイッチOFFの場合

マフ系として開発されたこともあり、単体・2種のスイッチOFFの状態で弾いた場合ではしっかりマフの音ですが、前述の通り基本的に音抜けを重視して調整されている感じがあり、特にビッグマフの特徴であるミッドスクープ感がギリギリ無くならない程度に中域が補完され、低域もベースに被らないようにすこしあっさりしている感じ

トーンの効きも通常のマフと同じくシーソー型で、各スイッチがOFFの状態では音作りに迷うことはないと思います。

この設定だとオペアンプマフっぽい感じはあまりなく、かなりスタンダードな(ラムズ・USA3rd・ディスクリート期)トランジスタのマフサウンドのように感じました。

・DOPINGスイッチ(上ポジションがON、下ポジションがOFF)

中音域を猛烈にプッシュ…とありますが、これは「マフのミッドスクープ感を打ち消す帯域のミドルを出す」という感じではなく、ギターのカリッとしたクリスピーなニュアンスを感じる中高域を強調する…

エフェクターでいうところのトレブルブースター的な帯域を出すスイッチのように聴こえます。

このスイッチをONにすると、普段マフを使っていて感じることがない弦のアタック感とディストーション的な切っ先が追加され、マフとディストーションを並列して慣らしているような音になるのが面白いです。

フロントPUでマフの音が潰れてしまう場合や、マフだけど複雑なコードやブリッジミュート多用したい方には非常に有用なスイッチだと思います。

補足説明

上記DOPINGスイッチについて、なんと記事ご確認いただいた際に開発を担当された技術担当者さんから(!)コメントをいただきました。 以下コメント

“DOPINGスイッチは、スクープする量を減らしています。

今までスクープされていた部分がスクープされないので、結果的にミドルが充実するようになります。

ただし、全く削っていないわけではなく、良い感じのところを狙って設定しています。

また、削るのを少なくすると音量感が大きく変わってしまい使いにくいので、同時に音量補正も行っています。「トレブルブースター的な帯域を出すスイッチのように聴こえます」 というあたりは音量補正も含めた変化から、そう感じていらっしゃるのかなと思いました。“

とのこと。いただいたコメントを元にもう一度弾いてみるとたしかに…ミッドスクープの谷が浅くなっている雰囲気も感じました。

おそらく僕の中でマフのミッドスクープをなくす=トーンバイパスのあのローミッドのモリモリ感…が印象としてあったので、コメントでいただいた通り、トーンをバイパスするのではなく「トーンが効く状態を維持しつつ、ミッドスクープの谷を浅くする」ことで、トーンをバイパスした時のこもった感じのミドルではなく、もう少し高い帯域のミドル~ハイミッドが強調されているように聴こえたんだと思います。1つのスイッチで音量の補正もされている細やかな配慮や、このような技術的な解説をいただけることに脱帽…この場を借りてお礼申し上げます。

 

・1979スイッチ(上ポジションがON、下ポジションがOFF)

ONにするとプレゼンスの領域が出るようになり、籠り感が解消されます。

ハムバッカーのギターやある程度アンプが歪んでいて飽和している時にも有効で、特にSUSTAINを下げれば下げるほど効果を感じる効き方をします。

普通のマフはSUSTAINを浅くするとすこしモコモコして極端に勢いがない音になりがちですが、1979スイッチをONにするとローファイさは残しつつも歪みとしての勢いは失わないバランス感になります。

また、このスイッチがONの場合ギターVolを絞っても高域が失われずきれいに
歪みが落ちてくれるので、単体で使用しても使いやすいです。


・2つのスイッチについて

基本的にDOPINGはミドル~ハイミッドと音抜け、1979は歪みの質感とプレゼンスをイメージして操作するとわかりやすいと思うんですが、DOPINGはトーンノブを絞った時、1979はSUSTAINが低い設定の時より効果的に効きます。

一般的なビッグマフ系はトーンを12時より低くすると音量や音圧、ローミッドの存在感は増すんですが音がこもりすぎて使いにくく、結局12時より右にノブを回して高域の音抜けを確保せざるを得ない状況になることが(少なくとも僕は)よくあります。

DOPINGスイッチは聴いた感じトーンの後に効いているような感触がありトーンノブを下げた時にこもった中高域を取り戻してくれるような効果があるので、トーンを下げた時の質感が好きだけど音がこもりすぎて使えなかった…という方にはかなりおすすめの使い方です。

■バッファ・他ペダルによる影響等

現行のエレハモのマフに比べると比較的バッファの影響を受けるタイプで、具体的にはバッファやほかの歪みを前段に置くとクリーミーな歪み感が減り、弦の鉄っぽい質感と分離が上がります。

コード主体で使いたい場合はバッファ後をおすすめ

音の変化はありますが、バッファ後だからといって音が破堤する感じではありません。バッファがある状態で2つのスイッチを同時にONにした場合、マフのローファイでクリーミーな雰囲気がほぼなくなり、弦の金属感のあるタッチが出てきて、ファズなのにディストーション的なまとまりと、オーバードライブ的な弦のキレが混ざり合い、奥行きがある立体的な音になります。

この時はSUSTAIN低めの設定でメイン歪みとして使用すると独特なのに使いやすく面白いかも。

■VS 現行BIGMUFF PI (BIG BOX)

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現行のビッグマフとの比較 特に普段現行のマフを使っていて不満があるorもう少しいいマフ系がほしいと思った時に視野に入ってくる価格帯だと思います。

基本のキャラは意外と似ていますが、MayonaiseFuzzの方が抜けよく切っ先が鋭い・低域がつぶれずストレスなく音が前に飛ぶ感じで、オリジナルの現行マフと比べて現代的に音がチューニングされているのがわかります。

音量感と歪み量はMayonaiseFuzzが勝っていますが、ローファイな感じや包み込む柔らかさが欲しい場合は現行マフの方が得意です。


■VS Wren and Cuff EYE SEE ’78(BIG BOX)

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Wren and Cuffはファズフェイスやビッグマフのクローンを得意とする海外のペダルブランドで、EYE SEE 78はその中でもオペアンプマフのクローンモデルです。

当初の比較の本命…でしたが、これは両機ともにあまり共通点がある音ではないように思います。オリジナルのオペアンプマフとの比較は所持していないためできなかったのですが、EYE SEE 78はグジュっと圧縮された独特な歪み感とウーリーな低音とミッドスクープが特徴で、どちらかというと作られたような誇張されたマフの音なのに対し、Mayonaise Fuzzはある程度ミドルもありマフの中では自然な歪みなのでそこに違いがありそうです。

音量は比べるまでもないほどMayonaise Fuzzの方が大きいです。体感で2倍くらいデカい。

Siamese Dream時期のスマパンっぽい音をMayonaiseFuzzで出そうとする場合は、トーンを10時くらいに下げでDOPINGと1979スイッチ両方ともONにした状態を基本に作り始めると近そうです。

 

■VS mid90s Bubble Font Russian と裏モード

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最後の比較ですが、非常に重要な項目です。

Mayonaise Fuzzは内部に差し替え可能なジャンパーがあり、右側に差し替えると裏モードになります。

内部基板上のジャンパを差し替えることで、Russian CIVIL WAR期のある特定の個体からインスパイアされたサウンドキャラクターへ変化します。この個体はCIVIL WARの外装を持ちつつ、コンデンサなど一部の内部パーツが後のARMY GREEN期で使用されたものと共通する不思議なモデル。そして他のモデルとは全く異なる、非常に強いローエンドの存在感と「塊感」が特徴的です。

おどろおどろしい低域成分。弦の悲鳴が聴こえるほど、ゴツゴツと存在を主張するアタック。バンドをクビにされないようまずは通常モードを試していただき、もっともっと!を求めるならこのモードをお試しください。

とのこと。

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筐体内のジャンパはつまみやすく、気遣いを感じます。

裏モードで弾いてみた印象としては…手持ちのバブルフォントにそっくりです!

一時期バンドでバブルフォントのロシアンマフを使っていて、ドフドフしてドスの効いたローがかなり気に入っており、何台か気に入った音の個体を選別して所持していたのですが、このモードの低域は僕が所持しているバブルフォントのロシアンマフに瓜二つでした。("一部の内部パーツが後のARMY GREEN期で使用されたものと共通する不思議なモデル"ってこういうこと…?)

基本ロシアンマフのクローンといえばシビルウォーかトールフォントで、バブルフォントのような低域が再現されておらずスペアを探すのを若干諦めていたんですが、これはスペアになりうる上に、オリジナルよりも音量が大きくローを維持しながらDOPINGスイッチで抜ける帯域も確保できるのもオリジナルのバブルフォントより勝っているように感じます。


■どのアンプ・ギターが合うか?
マーシャルJCM2000とJC120、後は僕が所有しているマーシャル(ベース用JCM800BASS SERIES)、Fender Deluxe Reverbでそれぞれ試してみましたが、どれもノブとスイッチの利き、ビッグマフの基本的な音のキャラを理解していればすべてのアンプで問題なく使用できます。

マーシャルだとジャキジャキしてしまうとのことでしたが、個人的にはこのマーシャルで使用したり他の歪みと組み合わせたときのジャキジャキ感が印象的で、特にDOPINGスイッチを入れるとマフよりもアンプの個性が出てくる印象に感じました。(その影響でマーシャルではジャキっとハイミッドが際立って、JCやFenderのアンプだとあまり目立っていない帯域をプッシュされるためバランスよくなるのかも)

DOPING・1979スイッチON、SUSTAINほぼ最小、TONE上げ目で歪んだアンプやメイン歪みの前段に置いてファズっぽいブースターとしても相性が良く、メイン歪みの後に置いて爆発したいときに使うようなオルタナティブ的な用法以外でも使える印象。

ギターに関しては、使用目的による部分が大きいのですがノーマルモードがいい意味で低域が他のマフよりスッキリしていて潰れにくいので、ハムバッカーのギターでマフを使いたい!という方には良い選択肢だと思います。

また4ピースバンドのリードギターでマフを使用していて音抜けに困っている方はノーマルモード+DOPINGスイッチを駆使して音抜けを確保できたり、逆にバッキングで常にファズっぽい荒めの歪みでかき鳴らしてみたい方はDOPING,1979スイッチをONでSUSTAINを低めにするなどが有効。

そして、前述のようにバブルフォントロシアンのスペアもしくはロシアンの低域は好きだけどボリュームと音抜けが物足りないという方は強くおすすめできます。

■注意点
とにかく2つのスイッチがSUSTAINとTONEに与える影響とノーマルと裏モードのキャラクターの違いから、かなり音のバリエーションが広いため、ただのマフ系というよりはMayonaise Fuzzを使ってどう今までの不満点を解消を解消するかorどういう音を出すか…みたいなイメージが無いとセッティングで迷子になりやすいかもしれません。

その場合、歪み量と2つのスイッチのどれをONにするかで出したい音のキャラを決めてから、トーンノブを最小から徐々に動かしてちょうどいいポイントを探すと音を決めやすいと思います。
  

以上、ナチュラルなマフの音に懐が広い2つのスイッチが組み合わさった非常に懐が広いファズだと思うので、BIGMUFFに初めて触れる方の場合、まずはノーマルモード、DOPINGと1979スイッチをOFFにした状態の一番スタンダードな設定で使い倒してみて欲しいですし、

BIGMUFFに慣れ親しんでいる方は一度「マフ系」というイメージと使い方のセオリーを捨ててSUSTIANとTONEを最小から最大まで、2つのスイッチとモードを駆使しながらファズとしてはもちろん、メインの歪みやブースターにしたり、自由にいろいろ試してみてほしい一台です。

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成分表示風のラベルがかわいい。

 


購入は各楽器店、もしくはUmbrella Companyが運営されているネットストアの
GIZMO-MUSICからも購入可能です。

gizmo-music.com